義足の名ジャンパーが五輪に出てはいけないのか

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議論の末、不出場という決着

ドイツの走り幅跳び選手、マルクス・レームをご存知だろうか。

義足の名ジャンパーと聞いて、ピンと来る人もいるだろう。

私は彼が五輪への出場を断念したことが残念なのだ。

健常者に勝った義足の陸上選手が巻き起こした議論−最先端技術による身体能力向上はどこまで行くのか−

義足ジャンパー、五輪なら「金」 「出場したい」で論争

走り幅跳びの義足選手は出場断念 来年の世界陸上へ規定改正も

14歳でウエイクボードをしている際に遭った事故で、右足を義足とすることを余儀なくされたレーム選手。

その後の類まれな努力の末、義足の走り幅跳び選手としてロンドンパラリンピックでは金メダルを獲得。

しかし彼の活躍はそれだけに終わらなかった。

科学が彼を助けているのか

事故から5年後に初めてスポーツ用の義足で走ったとき、「顔に風が当たり、心地よかった」。走り幅跳びにのめり込み、11年に7メートル09、13年に7メートル95と記録を伸ばした。

パラリンピックの世界で活躍し、健常者と互角に渡り合えることに大きな賞賛が集まっていた。

「互角」だったときは。

そして、14年7月にドイツ選手権で8メートル24を跳ぶ。健常者の国内トップ選手を抑えての優勝は“事件”となった。ドイツ陸連は「レームと他選手の跳躍のメカニズムは違う」とし、欧州選手権代表から外した。

彼がドイツ一、世界一になる可能性がわかった瞬間、世界は態度を変えた。

義足が彼の記録に好影響を与えている可能性が消えないとして、彼の記録を「参考記録」扱い、つまり公式なものとして認めないことを決めたのだ。

それでも彼は諦めなかった。

ドイツの名門体育大学であるケルン大学と共同で研究を行った。

結果は彼には味方しない。

南ドイツ新聞によると、ドイツ陸連は、8メートル24のレームと8メートル台の健常選手32人の、踏み切る前と後の速度の変化を比べた。踏み切り前、レームは秒速9・72メートルで走り、32人の平均10・43メートルより遅い。ところが踏み切った直後、レームの垂直方向の速度は秒速3・65メートル。32人の3・36メートルを上回る。また、踏み切り直後、レームの水平速度は0・92メートルしか減速していないのに対して、32人は1・50メートル減速していた。

遅いスピードで踏み切ったにも関わらず、彼の踏切スピードは健常者32名よりも好記録だった。

これを彼の踏切技術と捉えるか、義足に込められた科学技術の成果と見るか。

決着がつかない状況で、彼は五輪への出場を断念した。

これが皮切りとなるのか

今回のレーム選手が呼んだ議論は、再び繰り返されるのかはわからない。

現状では、彼の傑出したアスリートとしての能力が今回の問題を生んだと考えているからだ。

今後、こうした選手が多く存在したときに、量的、質的にも充実した調査が行われることを期待するしかない。

奇しくも今日、ロシアのオリンピック候補選手が、一部出場を認められる可能性がIOC会長の会見で明らかになった。

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